KIRINBLOG INTERVIEWS

気になるあの人の話を聞いてみたい。

2013年11月13日

「境界」を超えて新たな働き方を作り出す

下野弘樹 - 企画系フリーランス、Future Studio大名+(プラス)運営者

キリンブログのインタビューコンテンツ、記念すべき第1回目は福岡でプランナー・ディレクターとして活躍する企画系フリーランスの下野弘樹君に話を聞いてきました。

下野くんとは僕が福岡に来て間もない頃、WEBサービス系のイベントで出会いました。それから1年間、彼が運営するシェアスペースにメンバーとして関わらせてもらって、実に多彩な活動に関わっていく様子を見てきました。僕自身も下野くんが創りだした場を通じて多くの人と出会い、今の福岡生活を形作るうえで下野くんとの出会いはひとつのハイライトとなっています。

彼が運営しているシェアスペースの大名+(プラス)では、街づくりや農業、福祉と多彩なテーマで多くのワークショップが生み出され、新たなチャレンジへのファーストステップが次々と生まれています。NPOと企業と行政、いろいろな組織の壁を軽やかに飛び越え関わっていく彼の仕事ぶりに、もうひとつ深く踏み込もうと話を聞いてきました。

新たな価値観や発想が生まれる場、Future Studio

越水 下野くんと合ったのはこのくらいの時期だったかな。最近どうですか?
下野
越水 いきなりテキトーな質問で申し訳ないけど。笑
出会って1年たつからね。振り返り的な意味も含めて話していければ。
下野 個人というよりは僕の周囲で感じる福岡全体の流れとして。
福岡の地域イノベーションという面で今すごく面白い流れが生まれようとしている。
NPO団体や、クリエイティブなものづくりをしている人たちやIT・スタートアップの人たち、各分野のキーパーソンの人たちが有機的につながっていく動きが見られて、この3~5年で福岡はすごく変化すると思うよ。このタイミングで変わらないといつ変わるんだっていう。
越水 なるほどー。そういったいろんな分野の人たちと関わって活動する下野くんをどう表現したらいいんだろう?特にラベルづけをしたいわけじゃないけど、職業としてはどう説明したらいい?
下野 肩書きはいろいろでプランナー、ディレクター、コーディネーター、あとはシェアスペースの運営者あたりかな。
越水 そういう風にひとつ決まった肩書きをもたずに幅広い役割を持つ状況になったきっかけってなんだったの?
下野 東京でベンチャーを経験して福岡帰ってきた時はなにしようか決まってなくて、自分にできることは何かを考えた結果だと思う。もともと物事の進行管理や調整をしたり、企画立てたりすることが得意だし興味があるなと感じてたので。
越水 もともと独立志向だったの?
下野 ベンチャー時代は会社員とはいえ自分の興味あることが仕事にできてたけど、他の会社で同じように勤めながらやりたいことをやるっていうのはできないと思ったから。そんな器用じゃないし。
越水 自分の自由に働きたいというのが重要だった?
下野 もともと働き方というテーマに興味があって、起業・独立するのか会社員かという2択しかないのはすごく不自由だと感じてた。自分の趣味・関心やスキルを組み合わせて複業するスタイルって実現できるんじゃないかなって考えてた。
T型人材って表現があるでしょ。専門性を掘り下げるのもいいけど、Tの上の部分、横断する分野の幅広さが人よりめちゃくちゃ広ければそれ自体強みになるよなと思ってて。スペシャリストを目指すんじゃなくて「スペシャルなゼネラリスト」を目指せばいいと思ってた。
「こういうことをしよう」というより「こうやって働こう」っていうスタイルのほうを明確に持ってたかな。自分がモデルを示さないと説得力がないから。
越水 じゃあ思い描いた働き方を追求していくうえで、最初のとっかかりとなったのが企画とかプランニングなんだ。
下野 うん、まずはやっぱりできることから収益化を考えないといけなかったから。
越水 最初の仕事のきっかけってなんだったの?
下野 知り合いのベンチャーが体験型ギフトっていうのを扱ってて、天神の岩田屋でだす福袋企画があった。僕は知り合いにモデル事務所の人がいたのでキッズモデル体験ができる福袋の企画を通して、その僕がプランニングした福袋が一番売れて「へー」と思って。
越水 味をしめたんだ。笑
下野 そう、「あれ、これ仕事としてやれるんじゃない?」と思った。アイデアで終わるんじゃなくてきちんと実行できるネットワークも持ってるなと気づいて。
そのあと、ちょうど博多駅のリニューアルで、東急ハンズのオープンに合わせて10個ぐらい商品企画の話しが入ってきてね。生産側に企画プレゼンしたり交渉したりというのでまとめていった。それは全然売れなかったんだけど。笑
越水 でも企画した商品がきちんと店舗に並ぶというのは貴重な経験だね。
下野 「こんな感じでフリーでも仕事を生み出していくことできるんだ」って、企画から物事を形にする過程を学んだというか。
越水 なるほどねー。そこからいまやってる「場作り」にはどうやってつながっていくの?
下野 僕の関心はやっぱり「働き方」というところにあったから。
社会問題は多いけど、生活のために仕事をしないとならないし、みんなが社会起業家になれるわけじゃない。だけどみんながそういう問題解決に取り組めるようなワークスタイルやライフスタイルが増えてくればいいなーと考えてて、働き方自体を変えていかないといけないなーと思ってた。
コワーキングってキーワードも耳にするようになってきた中で、ロンドンのTHE HUBの話しを聞いて、問題意識のある人やクリエイターが集まる場所って自分が目指す場所だなと感じた。ちょうどその時期にある不動産の管理やプロデュースをする会社とシェアオフィスをやろうっていう話になったんだよね。
越水 当時の下野くんの活動を見て声がかかったんだ。
下野 そう。あとは向こうもなにか社会的なテーマを持ってビル再生を取り組めないかということで、間接的に「こういう人いませんか」と聞かれたとき「僕しかいないんじゃないですかねー」って。
越水 へー、じゃあそれがシェアスペース雁林につながってるんだね。
下野 シェアスペースの立ち上げをきっかけにメディアにも取り上げて頂いて。ちょうどその頃、シェアとかコワーキングとかが世の中のキーワードとして注目されてきてたので、そのテーマでイベントやワークショップしたり、SNSで発信したらどんなリアクションがあるかを1年くらい実験してみた。そしたら少しずつシェアというキーワードで認知されてきて、一部ではシェア野さんと呼ばれたり。笑
越水 シェア野さん笑。それは場を持ったことに対する強みっていうのも感じてた?
下野 そうだね。場があると人が集まるし、今に至る流れを作れた点では一番の強みだった気がする。
越水 場を持ったことでできた、人との繋がりで自分のやりたいことを広げられるようになったんじゃない。
下野 もともとは僕が個人でやってたわけじゃなく、一緒にしていた会社の事業で企画運営を担当していたという形だから。プロジェクト期間が決まってて、それが終わったときに「どうする?」って聞かれて、「この場所がなくなったら困るしなー」と思ってたので自分でFuture studio(以下、FS)という名前をつけて始まったのが去年の12月。で、そのくらいの時期にコッシーに会ったんだよね。
越水 やっとつながりました!なるほどね。
下野 まだコッシーと会ったころは「シェアオフィス」をやってた時ね。自分の考えでその場を作っていたわけではなかった。
越水 じゃあ僕が初めて遊びに行って、下野くんの活動について話を聞かせてもらったときは、自分の構想を始めようというときだったんだ。
下野 そう。
越水 働き方の模索から始まったような独立だったけど、場所を持ったことや経験したことでやりたいことは具体的に固まってきてる?
下野 なにかしら問題意識を持って動き出す人ってみんな最初は1人からスタートする。他の人とその動きを共有できないとつらいなと思ってて。未来を少しでも良くしようと行動している人が集まって問題意識や価値観を共有できる場所があったらいいなーと感じてた。何かいろんな課題にチャレンジできるような場が必要と考えてスタートしたのがFS。コワーキングスペースやシェアオフィス的なイメージは自分のなかではなかったな。
越水 チャレンジを支援するような場所?
下野 何かやってあげたいというより、チャレンジしていくことのきっかけとなる場であればいい。
この場を訪れた人からでたアイデアをちょっとだけ形にして、あとはやりたい人に繋ぐっていうことが好き。
越水 そういうとこがやってて楽しいんだね。
下野 才能を持っている人がチャレンジの機会やステージを得て成長していく、そういう流れが生み出せる場所だと思う。ステージとチャンスさえあればもっといろんな人が活躍できる。福岡がそういう街になればいいしFSの役割もそこにあるのかなって思ってる。
越水 FSと福岡という街とのかかわり。福岡にとってどういうふうになっていけばと考えてる?
下野 FSはよりよい未来へのビジョンを持った人をどれだけ増やせるか、その才能や可能性をどれだけ引き出せるかが役割だと考えてる。
チャレンジをプロトタイプのように小さなところから実現できるような場所にしたい。ここをきっかけに福岡という、もうちょっと広いステージで活躍していく人たちを生み出す場所になればと思っている。

「境界」を超え、新たな分野をデザインする

越水 こういった場所は増やしていくつもりなの?
下野 そうだね。一方は未来志向で世の中の動きに関心がある人が集まったり、一方はスタートアップ系の人たちと関わったり、というような場作りをしたい。特定の分野だけだと多様性がなくなってしまうし、コミュニティによっていろんな関わり方を作っていきたい。
越水 物理的なスペースの展開じゃなくてコミュニティとしての展開ね。
下野 そうそう。Futureっていうのはキーワードで、人によっていろんなアプローチが必要だけど「未来は良いほうがいい」っていうのは誰にとっても当然の意識だよね。包括的にいろんな分野にまたがるコンセプトとして「Future」というのを掲げている。だからFSは社会的な問題を扱うNPOにも関わるし、ビジネス課題に取り組む領域にも関わるし、ものづくりするクリエイターにも関わる。領域を超えて未来を良くしていく流れを作っていかなきゃいけないと思っている。
越水 そういう横断的な架け橋はまだ足りないと感じてる?産官学連携とか叫ばれるけど。
下野 うーん、ただ単に点と点でお互いを繋ぐような動きは散見されるけど、まだ面と面が交じり合った感じではない。まだ足りないと思う。
越水 そいうった方向でのまちづくりに関して、何か個人的な考えはある?
下野 個人的なこというと特定の社会問題にはあまり興味がなくて笑。というのもひとつの領域の問題はその領域からのみ成り立つわけじゃないと思ってて。どこか一個解決しても間に合わない。
越水 問題の原因は複合的になってるっていう。
下野 そう。問題は複雑に繋がってて。一方で個々の分野には僕より詳しいプレイヤーはたくさんいる。ただ、隣り合う領域同士などでリソースを融通しながら連携して問題解決しなきゃならないんじゃないかなーと思ってる。例えばNPOと行政の連携をもっと円滑にするとか。そこでは全体見てディレクションする人が必要。だから僕は個別の問題にどっぷり浸かりたくない。教育に例えると幼稚園から小中高、大学と独立して問題に取り組むんじゃなくて、大きな流れを把握する人が必要じゃないかな。
越水 全体をみてプロセスをデザインしていくっていうのかな。
下野 役割もはっきりしないし仕事にしずらいから難しい分野だと思うけど。領域の境界を越えていく人が求められてると思う。足りないギャップを埋めたり横断的にディレクションするような人をバウンダリアンって呼んでるんだけど。
越水 バウンダリアン。今話し聞いてて思ったのは、各分野には専門性の高い人達がいるけど、その分野同士の間には隙間があって、そういった隙間を調整したり埋めていくのが下野くんの役割なのかなと思って聞いていたんだけど。
下野 そういう感じ。僕個人もそうだし、社会的にもそういう人材は求められているんじゃないかって。
越水 それが、バウンダリアン。始めて聞いた。
下野 僕が勝手に作った言葉だから
越水 笑。なにバウンダリアンって
下野 バウンダリーデザイン、「境界をデザインをする」ということをリパブリックの田村さんが言ってて。まだ詳しく聞いてないのでぼくの勝手な解釈だけど、世の中には色々なコミュニティや活動があるけど、区画分けされすぎていて、その間に境界が生まれてる。
サッカーで言うとFWは攻めしかしないし、DFは守りしかしないような。境界を飛び越える動きが活発化されるとポジションが流動的だけど有機的に連携できる素晴らしいチームができる。
FWはどうやって点を取るか、DFはどうやって失点を防ぐかが最重要な課題意識だけど、境界がデザインされてるチームはDFも必要な時に攻めるし、FWも守る。その中でバウンダリアンはリベロみたいな存在なんだと思う。
越水 専門化しすぎしちゃった分野をつなげていく取り組みね。
下野 うん。そういう分野を扱う人たちが増えてこないと、もういろいろ問題に追いついていかない気がする。
越水 さっきいった「スペシャルなゼネラリスト」みたいな人じゃないとそういうことってできないよね。ずっとひとつの企業で働いて特定のスキルを高めていくという考え方だと難しい。
下野 あとバウンダリアンのもう1つの役割として「課題を本質的に見極める」というのがあって、最近印象的だったことでドネルモの山内さんが話してたのは、認知症患者が徘徊する事例があると。どうしたら徘徊を止められるかを問題にするより、徘徊しても安心な街を作れてないことが問題という考え方。対処療法的な考え方ではなく問題の本質を大枠でとらえるというか。
越水 なんとなくわかってきた。
下野 新しい問題意識を提示するというかね。ちょっとここらへんの説明はまだ模索中なんだけど。あとは最近、タテ・ヨコ・ナナメの概念というのを考えていて。横っていうのは活動を増やす。
越水 母数を大きくするということね。
下野 縦は活動がスケールアップしたりスキルがレベルアップすること。ナナメは福祉を例に出してみると、福祉も分野や組織によって細分化してしまっている、福祉の領域全体として横断化してまとめていくような活動。その3つの軸を意識してる。福祉以外にも多様な人がこの場所にはあつまるし、そこに価値を感じる人も多いので、分野を横断した活動を活発化させていくのがここの価値を高めることかなって。
越水 縦のスキルとかは方法が明確だけど、ヨコに広げるのはどうしたらいいだろう。
下野 よく言われるけど、エコシステムを作り出すことが大事だと思う。チャレンジの事例を作って、ノウハウを共有して実践しやすくする。またチャレンジが増える。そういうエコシステムこそFSみたいな場所で起こりやすいし、そこに不動産を場の活用というテーマとして合わせていけば街がもっと楽しくなると思う。コラボが起こしやすいのも福岡の魅力じゃないかなと思う。
越水 なるほど。今なにか注目している活動などってある?
下野 今一番面白いのは。。ゲリラ企画。街中に「あっ!」と驚く発見や出来事、イベントがあるとすごく街が楽しくなる。日常を刺激するようなゲリラ企画をいまクリエイターの人たちと構想してる。
越水 それはフラッシュモブ的なことなの?
下野 そう。渋谷であったゲーム(ラグナロクオデッセイエース)のプロモーションなんかがイメージに近いけど。ああいったイベントを同時多発で連携してやったら面白いんじゃないかな。そういうのをゲリラで増やしていく活動をやろうとしてて楽しみにしてる。
越水 いいね。福岡の街に対しては地元のみんなはやっぱり愛着強いよね。
下野 福岡の住みやすさとかあるけど、それ以上に魅力なのはやっぱり個人ベースで何か面白い活動をしてる人が多いと思う。ただ、それが街全体としては広がっていかないし、持続可能な仕組みも足りないし、大きく才能を発揮する場所がない。KOO-KIの江口さんんが言ってたけど、「福岡は才能の予備校だ」って。種はたくさんあるけど、それが花開く土壌がないのでどんどん東京とかに流れてしまう。すこしずつ種が花開くことができる場所は増えてきてる気がするけど。
越水 そうか、FSの構想がスケールすれば福岡の今後が楽しみだね

Future Studioまでの歩み、それぞれに合った「働き方」を

越水 じゃあそろそろ過去を掘っていこうか。実は下野くんの過去は僕、あまり良く知らないので笑
下野 うん。みんなよく知らないと思う笑
越水 前は東京で仕事してたんだよね。大学は福岡でしょ?新卒時の就職で東京にいったの?
下野 いや大学卒業のときには就職してない。普通に就職していく周囲を見てて「この人たち何やりたいんだろう」と思いながら。
越水 見た目温厚そうなのに、けっこう性格がアウトローだよね。
下野 真面目そうにみられるけど。
越水 反逆児だよね。アナーキーな。アナーキスト下野ね笑
下野 ここ数年でその傾向が顕著になってる笑
ゼミの頃はもともと海外に興味あって、開発経済っていう、途上国経済について学んでた。それをきっかけに世の中のいろんな問題を知って、NGOを回ってみたりしたんだけど、「この人達の取り組みでは世の中変わらないなー」と感じたんだよね。
越水 なにが足りないと思ったの?
下野 ボランティアでやってるような雰囲気?片手間なボランティアでは解決できるような問題じゃないだろうと、何も知らないんだけど、なんとなく思ってて。
越水 若造がね笑
下野 そう。若気の至りでね。そんなこと思っちゃったからその分野で就職のイメージを描けなかった。結局道を選べずにフリーターしつつ、そこから僕の失われた5年に入るわけで。
越水 下野の失われた5年笑
下野 24歳くらいまで、なにかしなきゃいけないと思いつつ道が見えないという5年間。あの時期はほとんどなにもできてない。その時期を経て、いずれちゃんと働かなきゃといけないし、今しかタイミングないと思って海外を見てきた。スペイン行きたいと思って。
越水 その時点でまだ社会で働いたことがない?けっこう引っ張ってるね。
下野 そう。それで海外行くためにお金貯めなきゃってことで、「旅好きのおれにぴったりだ!」とリゾートバイトを半年以上やったかな、100万くらい貯めて2006年ワールドカップ前に1カ月半くらいかけてスペイン、フランス、ベルギー、オランダと回ってドイツ行って日本に帰ってきた。
実家は長崎なんだけどなぜか福岡に帰ってきて、部屋借りなきゃいけないからお金貯めるためにまた半年くらいリゾートバイトに行って。
越水 また笑。根無し草やね
下野 それで福岡に戻ってきたのが25歳。そろそろ働こうと思ったけど「普通に生きていきたくない」というのはブレなかった笑。とはいえ食べていけないので、とりあえずの仕事で人材系の会社で働き始めて、今のコーディネートのスキルは結構そこで身についたのかも。求人の原稿作ったり営業のアシスタントやったり、デザイナーの橋渡しや調整したり。
越水 営業ではなく制作寄りの業務だね。
下野 うん。割と自由度が高いところだったな。周りの仕事が遅くて、「人より多く仕事すれば自由にしてても文句言われないだろ」と思って、自分のペースで仕事したいからどんどん仕事抱えいてった。。制作だけどお客さんと直接話したり、同じポジションの中でもちょっと他の人と違う動きをしてて「やっぱり組織とかに馴染めないな」とか思ったよ。
越水 決められたことやるっていうのが苦手なんだね。単純作業とか
下野 無理無理。誰でもできることとかモチベーションがあがらない
越水
下野 自分自身にしかできないことをやりたいという欲求は昔から強かったかもしれない。楽しかったけど1年経ってこのまま続けてもしょうがないなと過ごしてた。そんな時にカンブリア宮殿にゲストでフローレンスの駒崎さんとかが出てるのを見て、同世代でこんな生き方、働き方が出来るんだ!と衝撃を受けて。
越水 フリーランス的な、働き方の自由度が高いということ?
下野 というよりは社会性と経済性の両立という点で。「俺が進む方向はこっちだ!」と衝撃をうけた。
WEBで情報集めて、福岡のイベントに足を運んで知り合いや刺激が増えたけど、「自分で何かやらなきゃな」と考えて。
なんとなく、本当になんでなのかわかんないけど「親になる前の育児教育」ってテーマでイベントをすることにした。
知り合いに人を紹介してもらったら、まさに育児支援というテーマで仕事をしてる人で、いろいろシンクロする部分があって協力を得られることになって。せっかくのチャレンジだから出来るかぎり自分でやってみようと思って、産婦人科突撃したり、子育て支援に関するイベントだから子供が遊べる環境用意したり。
越水 本業でもないのにえらい本格的に動いてるね
下野 意外に事が早く進んで。そんな活動してたらなぜかラジオにでることになって、会社の昼休みにラジオに出たり笑
昼休みに終わらなかったから会社に戻ると注意されてね。「ちょっと遠くに言ってました」ってごまかしたり
越水 言い訳になってないでしょ笑
下野 結局ツメが甘くてそんなに集客はできなかったんだけど。自分でここまでやったという経験で評価してくれる人がいて、その繋がりで次に入る会社の社長と出会ったんだよね。ちょうどソーシャル・ビジネスの立ち上げのときで加わったっていう。
越水 ソーシャル・ビジネスについてもう少し詳しく教えて
下野 世の中の課題を解決しながらビジネスとして収益を得る形。そこは立ち上げ間もないベンチャーだったんだけど出資者もいたり。
アメリカでも事例があるけど、ギフトカタログのような冊子にNPOの活動をまとめてあって、巻末についてるクーポンやWEBから各団体への寄付ができるという。SNSがまだ流行るまえにそういったものに取り組んで、冊子やWEBも結構気合入れていいものを作ったよ。
越水 冊子をみて)あーなるほどー。
下野 日経新聞とかに取り上げてもらったけど売れなくてねー。マーケティングが全然できてなくて。
越水 この会社のなかでの下野くんの役割は?
下野 ベンチャーだからなんでもやらなきゃならなかった。企業のCSR部署に対して営業したり、イベント顔出して繋がり作ったり。
越水 それを東京でやってたんだ。東京に移るのもさらっと行ってるよね笑
下野 そこはノリで東京にいったね。
越水 なんでもやらなきゃならいけないってのは大変だったんじゃない。
下野 志を同じにした仲間とチャレンジするっていうのは楽しかったけどね。事業的には失敗したけどいい経験になった。経営の数字も見れたし、マーケティングの失敗や、会社の成り立ちを学ぶにはいい経験だった。
越水 そして東京生活を経て福岡に戻ってきたんだ。
下野 うん、冊子も売れなかったし。生活環境は福岡のほうが気に入ってたし、なんかこっち(福岡)で次はチャレンジしたいなと思った。同じことやるにしても福岡のほうが伸びしろを感じる部分もあって。
越水 十分な都会だしね。
下野 そう、問題解決に取り組んでる人も多いし、取り組み方もクリエイティブな解決を追求してる人が周りにたくさんいていいなーと思った。
あとひとつ考えるきっかけがあって、社会的問題意識が高い、優秀な人達が集まったコミュニティがあって、仕事が忙しい中で深夜や早朝の時間を使ってミーティングしたり、NPOと共同で商品開発とかしてたけど、彼らは仕事がもっと忙しくなる中で続けていくのは難しいだろうし、「この人たちが社会起業家になれないなら、誰がなれるんだろう」って思ったことがあった。ただ、社会的分野でチャレンジする人がみんな会社を辞めて独立しなきゃいけなかったり必要以上にリスクを背負うのも違うよなと思ってて、そこで働き方自体を変えなきゃダメだよなと考えるようになった。本業の仕事と別に個人的なプロジェクトを持ったり、選択肢がもっと増えればいいなって。
越水 うんうん。
下野 最初は社会的なことに関心が強かったけど、世の中働き方という点で迷ってる人がたくさんいるなと思って。今の世の中で血が滞っている部分のひとつが「働き方」というテーマなんだなって。それで最初の話に繋がってきてる。
越水 そう繋がっていくんだ。就職の時にひっかかったのも「働き方」に疑問を感じたから?
下野 やりたい働き方が一般的な会社じゃできなそうだから選べなかったな。就職活動の仕方も疑問を感じたし。
同じような内容のエントリーシート何十枚も書くとかちょっと違和感があった。
越水 なるほど。ここから最初のシェアスペースのきっかけがあって、FSに繋がるんだね。
また1年後とか半年後とかに振り返りをしたいね。今日はありがとうございました。

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下野弘樹

Future Studio 大名+発起人。NPO支援を行うソーシャルベンチャーを経て2011年に独立。働き方や生き方を自分で選択する「セルフデザイン」をテーマに、企画系フリーランスとして不動産、メディア、次世代育成、地域づくり、伝統工芸、日本酒など、共感を軸に分野を超えて「複業」スタイルで活動。